日本臨床細胞学会雑誌
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原著
甲状腺細胞診陰性症例における TSH 測定の有用性
森 祐紀越川 卓尾関 順子柴田 典子植田 菜々絵佐々木 英一村上 善子細田 和貴谷田部 恭長谷川 泰久
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2014 年 53 巻 5 号 p. 356-361

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抄録

目的 : 甲状腺細胞診検査における偽陰性率を低減させることを目的として血中 TSH 値について検討した.
方法 : 甲状腺穿刺細胞診検査が施行され, その後甲状腺切除術および病理組織検査が行われた 276 例を対象として, 術前の血中 TSH 値と病理診断との関係について総計学的に解析した.
成績 : 病理診断が良性の 156 例と悪性の 120 例の間で TSH の平均値に有意差を認めた (p=0.011, t 検定). TSH 1.8μIU/ml 以上の 79 例では 1.8 未満の 197 例に比べ有意に悪性が多く (p<0.001, χ2検定), オッズ比は 5.06 倍であった. 術前の細胞診検査が陰性であった 170 例においても, TSH 1.8 以上の 30 例では 1.8 未満の 140 例に比べ有意に悪性が多く (p=0.020, χ2検定), オッズ比は 3.25 倍であった. 細胞診検査が陰性であった 170 例に対して TSH 1.8 以上を悪性の疑いと判定することにより偽陰性例は 19 例から 12 例に減少した.
結論 : 細胞診検査が陰性の症例においても, TSH 1.8 以上は悪性を疑う所見として再検査や外科手術を促すことが細胞診検査の偽陰性率を低下させる有効な手段である.

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© 2014 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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